微糖な日々

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映画「シン・ゴジラ」から分かる"良い映画"の鉄則

どうも。成宮春です。

 映画「シン・ゴジラ」、すごく良い映画でした。終始鳥肌が止まりませんでした。「うわ、すげえ...」という思いが、何回も何回も湧き出てきて....。そういう意味で笑いが止まりませんでした。「なんだこれ」と。しかも、ゴジラの概念を持っている人も、それを持っていない人も楽しめる映画に仕上がっています。まだ観ていない方は是非。いやあ、もう一度観たい.....。いや、あと2億回くらい....。

 

 ゴジラ映画史上最もヒットした作品になるかもしれない「シン・ゴジラ」。私は、この映画を観て、確信に変わったことがひとつありました。

 

「あ、展開が全部一緒だ」

 

と。これはなにも、名作と言われる全ての映画が、ゴジラが出る→日本がなんとかする→そこであの人が来て....のような、具体的な運びをしている事を指しているわけではありません。例えば、今公開されている「君の名は。」には、ゴジラは出てきません(まだ観ていないので、確定ではありません)が、世間の評価は非常に高いものとなっています。はやく観に行きたい。おっぱい揉むらしいですよこれ。やばくないですか

 では、展開が一緒とは、どういう意味か。それは、言い換えれば、「起承転結」を指します。ゴジラが出てきてどうのこうの、よりも、もっと抽象的な話です。もっと大きなくくりの話です。では、それを、映画「オデッセイ」で見てみましょう。映画「オデッセイ」とは、火星でぼっちになるあの映画です。

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オデッセイ 映画 - Google 検索

*1

 

 

 

 

 映画「オデッセイ」は、初っ端からいきなり火星で孤独になってしまいます。「うわ!はや!」となりました。そして、彼の有能さから、生活の確保・地球へ生還する手はずも早々に獲得します。

 しかし、アクシデントが起きます。じゃがいも大爆発事件です。とんとん拍子に進んでいたものが、これを機に全て狂い始めます。「そもそも、彼を救うことはできるのか?今のうちに見捨てた方がいいでのはないか?」という恐ろしい議論が、地球で交わされるようにもなります。

 それでも、様々な手を尽くし、なんとか救出方法を見つけ出したことで、いよいよ本格的な救出プランの準備がなされていきます。

 そして、ついに救出の日..................。

 

映画「オデッセイ」の大まかな流れはこうなります。『は?ただの起承転結じゃん。これと「シン・ゴジラ」、その他名作のどこが一緒なんだよ』と思うかもしれません。落ち着いてください。ここで最も重要なのは、着眼点です。良い映画というものは、必ず魔法が存在します。例えば、ホラー映画であれば、「たとえ、どんなホラーも怖く思わない人でも怖くてたまらなくなってしまう」という魔法が、監督によってかけられているのです。その魔法の鍵・魔法陣は、その映画の中に隠されているのです。それは、この映画も例外ではありません。それでは、映画「オデッセイ」は、一体どんな魔法がかけられているのか。それは、

 

体感速度です。

 

 先ほどに書いた、映画「オデッセイ」の話の流れを参考に説明していきます。まず、第一段落から。この部分は、CMなどで観る前から分かっている事実を最初から説明していく部分です。私は、これを観る前から「あるモノスゲエ天才が、火星で1人になっちゃったけど、なんかトンデモネエ方法で酸素つくって頑張る映画」という、"前情報"を持っていました。なので、「火星で孤独だ!」という死ぬほど怖いシーンになったとしても、私は、「さあ、ここからどうするんだ?」とワクワクした気持ちで観ていました。ですので、このシーンの体感速度はとてつもなく速いのです。なぜならば、"前情報"を補足しているだけですから。また、それは、生きていくための行動を始めた時も同じでした。とても興味深い方法でたくさんの生活必需品を手にしていくシーンも、もともと分かっていた部分が多かったので、体感速度は非常に大きいものでした。

 この時、既に魔法にかけられていたのです。それは、「地球ではない惑星から、たった一人で何年も生き抜き、地球へ生還するむずかしさ」を"忘れてしまう"魔法でした。

 

 では、次に第二段落を。じゃがいも大爆発事件です。ここは、本当に衝撃的でした。そして、とてつもなく不安になりました。なにせ、ここからは、前情報のない場面だからです。最初にあった、私のワクワクした気持ちは、スクリーン上のじゃがいもと一緒に吹き飛んでしまいました。すると、「本当に生還できるのかな」「これからどうすればいいんだろう」「きっと、とても寂しいだろうなあ」などの、火星に1人でいる彼の立場になって考えられる思いが湧き出てきました。そうなってくると、途方もない年数を、このクソみたいな惑星で過ごさなければならない不安や、虚しさが、体感速度をゆ~~っくりにさせていきます。

  分かりますよね。完全に製作者側の思うつぼです。この映画を観に行く人って、私と同じように「火星からどうやって生還するんだろう!」とワクワクした気持ちで行くと思うんです。それを分かっていて、最初はめちゃくちゃ順調にして、テンション上がっているところをどん底まで叩き落す。それによって、視聴者は、一気にその世界へ引き込まれるわけです。なぜならば、私のように、映画に出てくるキャラクターの心情を思う気持ちのような、""映画の中の世界のことを考える時間の余裕""ができるからです。

これは、つまり、

 

はやい体感速度 - おそい体感速度 = どうしようもない空虚な時間

 

ができている状態のことです。それをどうにか埋めるために、グングンその世界へと引き込まれるわけです。この時点で、私は、不安で泣きそうになっていました。うるうる。

 

 そして、第三段落。ここからは、地球サイド、言い換えれば、火星に残された彼以外の人物にスポットライトが当てられていきます。ここで、本当にたくさんの人物が掘り下げられます。普通ならば、「多いよ!一気に覚えられるか!」ってなるくらいの情報量なんです。しかし、すんなり入ってきます。なぜならば、既に世界に飲まれているからです。体感速度がゆっくりになっているのもあって、本当にグイグイ理解していけます。この部分は、友情がメインになっていましたね。すごく感動しました。

 

 私が、この体感速度を利用した魔法に気付いたのは、第三段落と第四段落のちょうど境目でした。救出プランが実行される地点まで、何か月?何年?もかけて向かうシーンです。砂漠のような火星が、ズームアウトで描写されるあのシーンです。あの時に、

 

「良い映画って、同じような展開だよなあ」

 

と感じました。映画「オデッセイ」では、この手法がこの映画を名作にしている所以と言っても過言ではありません。なぜならば、CMを観た時点で、話の流れがなんとなく分かってしまっているからです。普通、火星から生還しないエンディングなんてありえないじゃないですか。助かるに決まってるんですよ。しかし、第四段落を観ている時には、「頼む!助かってくれ!!成功してくれ!!!」と死ぬほど祈っていました。息遣いが自分で聞こえるほど荒かったです。唾を飲むのも、時間がもったいないと思ってしまうほどに見入っていました。助かるに決まってるのにですよ。頭おかしいです。

 

しかし、そうせずにはいられないのです。なぜならば、その展開によって、視聴者は、魔法にかけられているからです。その魔法の手順とは、

 

1.最初はなにもかも順調に事を運ばせ、視聴者の予想通りの「オデッセイ」を見せてから

 

2.いきなり「現実」というハンマーでぶっ叩いて不安を煽りまくり

 

3.続きが気になって気になって仕方がない時に「様々な情報」というエンディングのスパイスを与え

 

4.エンディングの際には、視聴者はいつのまにか、助かることを本気で祈っている

 

という流れです。これは、「助かることを前提にしている」から「助かるかどうか、最後まで分からない」魔法をかけているのです。

 

  恐ろしいですね。当たり前のことが、分からなくなってしまっているのですから。良い映画とは、恐ろしいものです。いやあ、恐ろしい。

 

 

  さて

 めちゃくちゃに長い例示でしたね。

「同じ展開」とは、なんなのか。これがお分かりいただけたかと思います。私は、この「同じ展開」を、自分の知っている名作に当てはめてみました。これが当てはまる確率は、かなりの高さを誇っています。これが100%にならない理由は、他にも多くの""魔法""が存在しているからです。水属性のモンスターには、雷の魔法を。光属性のモンスターには、闇の魔法を。このように、どのような映画を作るかによって、最適な魔法が変わってくるからです。

しかし、映画「シン・ゴジラ」には、この展開が当てはまります。

分かりますか。つまり、

 

シン・ゴジラ」は名作になるべくしてなった

 

ということです。

この記事は、あくまで、映画「シン・ゴジラ」から分かった、製作者側が使う魔法のひとつについての記事です。映画「シン・ゴジラ」の批評ではありません。いやあ、書きたいんですけれど、今回は、この映画が素晴らしすぎて、著名な方々がこぞって批評しているので、全て言ってしまっているんですよね。

 

 というわけで、いかがでしたでしょうか。まだ上映中の映画なので、ネタバレ無しの記事となりました。あと相方がまだ観てない。はやく観ろ。いつか、BDが発売した時にでも書けたらいいなあ、と思っています。

それでは。

 

 

 

 

 

 

*1:以下、映画「オデッセイ」のネタバレを含みます